なつっこいね、にゃんにゃん

KAT-TUNについて語る。

COUNTDOWN LIVE 2013 KAT-TUN

挨拶から始まるという異例の幕開け。

 爆音とともに降臨する、壁をぶち壊して登場する、CGを駆使した映像で魅了する。KAT-TUNのコンサートとは、「派手」に「豪華」に始まるものだ。それがKAT-TUNのブランドイメージであり、KAT-TUNがKAT-TUNであり続ける限り、これは揺らぐことのない「信念」のようにも感じていた。しかし、今回は違った。暗転後、静かに登場した4人。漆黒のロングコートに身を包み、神妙な面持ちで口にしたのは、謝罪と決意の言葉だった。

 

 「僕たちKAT-TUNは過去を隠すつもりはありません。赤西というメンバーが抜け、田中というメンバーが抜け、ここにいる4人がKAT-TUNとして進んでいます。」

 

 そう、それはまるで餞のような。そして、まるで弔辞のような。物語の終わりと始まりを繋ぐ、大事な儀式だったのだろう。新たな扉は、こうして開かれたのである。

 

偽善塗れのこの夜をゼロに還し始めよう。

 1曲目、「GIMME LUV」。この曲は、「CHAINからの解放を歌っている」と言ったら、非難轟々だろうか。もちろん、「CHAIN」を偽善だとは思っていない。ツアー最終地である仙台まで笑顔の鎖を繋ぎ、震災による悲しみを少しでも和らげようとした彼らの思いは本物だった。しかし、固く繋いだはずの鎖には、いとも簡単に亀裂が生じてしまった。信じていたものが、偽物になってしまった。あの夜から立ち止まり、その場で足踏みをしているだけ。なかなか進みだせない雁字搦めの我々を、笑い合える未来へと導いてくれる一筋の光を見つけ出せた気がした。

 

過去と現在に楔を打ち込む。

 2曲目、「楔ーkusabi-」。楔とは、「物を割る」と「固く繋ぎ合わせる」という正反対の2つの意味を持つ言葉である。KAT-TUNはこの曲を歌うことで2つの作業をやってのけたのではないだろうか。両者の間に楔を打ち込むことで解放した絆を、楔を刺すことでもう一度強固な絆に作りかえた。

 水の使い方が印象的だった。ステージ上に突如として現れた水の壁。それは、まるで、過去に区切りをつけた彼らの心情を表しているようだった。空高く舞い上がった透明の水柱は、過去と決別するとともに、未来への約束を確かめる楔となったのだ。

 

走馬灯のように巡る数々の思い出たち。

 結成時から現在までの歴史を振り返る壮大なメドレー。次々に曲が入れ替わっていく様は、まるで走馬灯のようだった。人が死に際に体験するとされる、一生の記憶のリピート現象。臨死体験でもしたかのように、我々はそれを目撃するのである。懐かしい楽曲に歓喜し、当時へと思いを馳せ、興奮と感動と躍動を覚えた夢のような時間。しかし、そこには、「もうこの時には戻れない」という切なさも孕んでいたように感じた。

 10周年の節目の年ではなく、このタイミングでこのメドレーをやりきったことに大きな意味がある。KAT-TUN新時代を築き上げていく物語の序章に必要だったのが、こうしてけじめをつけることだった。過去も全部抱きしめ、包み隠さず全てをさらけだせたことは、今後の順風満帆な航海への足掛かりとなるに違いない。

 

自ら炎に飛び込み、次世代の生命を宿す。

 めくるめくメドレーを終えたステージには、燃え盛る炎が登場する。4つの炎は、彼らが再生と復活を遂げようともがき苦しんでいる姿にも見えた。「PHOENIX」は、死期が近づくと自ら炎の中に飛び込んで己の身体を灼き、新たな生命を宿らせ、また天高く飛び立っていく「永遠」の象徴である。過去を背負ったまま炎に身を任せ、悲しみ羨み苦しみ欲望痛み怒り悔いとともに燃え尽き、そして新たな生命を生み出した4人。KAT-TUN新時代のオープニングにふさわしい楽曲・演出だったことは一目瞭然である。

 

この絆1つ以外何もいらない。

 誤解のないように言っておくと、わたしは過去を否定しているわけではない。過去がなければ現在はないし、元メンバーがいたからこその功績も数多く存在している。応援の形は自由であり、「ファンならばこうしなさい」と強要することは誰もできない。様々な出来事が起こったグループなのだから、ファン同士で溝が生まれたり不和が生じたりするのは仕方のないことだ。何が、誰が、正しいのかなんてことは到底分からない。しかし、これだけは言える。6人には戻らない。5人には戻らない。KAT-TUNを守った4人が、あえてはっきりと口に出してけじめをつけたのだ。

 KAT-TUNには、自らが世界の中心だと胸を張り、これからも圧倒的なパフォーマンスを実現していってほしい。構成の粗さ、曲数に対して準備時間が不足していたなど、反省点はいくつかあれど、KAT-TUNの気高い存在感を改めて実感する素晴らしい公演だった。KAT-TUNは逆境には負けない。踏ん張った分、より高く飛び立てるはずである。今後に大いなる期待を抱いた2日間だった。